文芸春秋で、精神科医の和田秀樹が実に面白い提案をしたことがある。 いくつかの例外を認めた上で、相続税を100%にすれば、日本が再生できるというのである。 「・・・親が長生きするようになった。両親とも死なないと相続が完成しないことを考えると子供が親の財産を得るのは、今や60歳前後となってしまった。・・・政府税調は最低10%、日本経団連は18%の消費税を主張している。これはどういうことかというと、子育てや住宅ローンなどで、いちばん金のかかる30代、40代は18%もの消費税をとられ、60歳くらいに親の財産が転がり込んでリッチになるというライフサイクルを意味する。しかも現役世代が払う高い消費税も、年金や保険料も、高齢者が使うのである。 現代日本の個人金融資産は1400兆円を超える。それ以外の資産を合わせると個人資産は3000兆円にはなるだろう。その8割が50代以上のものとされるので、今後30年間で2400兆円の財産が相続されることになる。親を介護した子供や事業継承減免をしても、年に60兆円ほどの相続税をとれるはずだ。 これによって、60歳になったときに親から入ってくる財産はあてにできないが、消費税はむしろ今より安くできるし、年金や医療にも税金をつぎ込むことができるので、これもバカ高くならなくて済む。 若い頃の負担が高ければ、ますます少子化が進むし、子供の教育費もかけられない。高齢になってから財産をあてにするより、若い頃にしっかり金を使えるほうがまともなライフサイクルだろう。 さらに高齢社会において相続税100%が都合がいいのは、年をとって財産が残せないのなら、高齢者が金を使ってくれる可能性が増すことだ。・・・それ以上に期待したいのは、それによってさまざまな高齢者向けの産業が生まれることだ。これは高齢者の幸せに直結するほか、いくつも副次的なメリットが生じる・・・」 この後、和田氏は、伝統産業や農業の事業継承者には、特例で相続税を一生猶予してもいい、という考えを述べ、さらに想定される反論に対してはかなり細かく説明がされていた。それらは、おおむね納得できるものであったが・・・まあ、そもそも、親の財産を目当てに生きようとする金持ちの息子連中が大反対する案だから実現の可能性はまずないと思うので、真剣に検討する気はないが・・・ しかし、基本的な発想としては、大賛成だ。 「児孫のために美田を買わず」(西郷隆盛)という言葉がある。 人間の生き方としては、成人するまで養育してもらったら、後は自分の力で金を稼いで、子供を成人させて、その後は稼いで貯めた金を全部使い果たして死んで行けばいいのではないだろうか。 死ぬときは財産を全額、国に納める。 それが嫌なら、全額適切なところに寄付する。 子供のためにも、それは絶対いいことだ。 私はそれに近い形で財産は処理したいと思っている。